「ミネラルウォーターのラベル表示例」にある「品名」は、農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」に基づいて以下の通り分類されます。

▼ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン 1990年制定 農林水産省

ナチュラル
ウォーター
ナチュラルウォーター 特定水源より採水された地下水 ろ過、沈殿及び加熱殺菌以外の物理的・化学的処理を行ってはならない
ナチュラル
ミネラルウォーター
特定水源より採水された地下水のうち、地下で滞留又は移動中 に地層中の無機塩類が溶解したもの
ミネラルウォーター ミネラルウォーター ナチュラルミネラルウォーターの原水と同じ場合 ろ過、沈殿及び加熱殺菌以外に次に揚げる処理を行ったもの

・複数の原水の混合
・ミネラル分の微調整
・ばっ気など

ミネラルウォーター ボトルドウォーター その他、原水が地下水以外の場合

-純水、蒸留水、水道水など

但し、食品衛生法に基づく殺菌が必要である

▼ヨーロッパの基準 (コーデックス)

ボトルド・ウォーター
ナチュラル
ミネラルウォーター
特定水源より採水された地下水 ・殺菌処理を行ってはいけない。
・厚生省(に準じる公的機関)の審査と承認を必要とする。
・人体の健康に有益なミネラル分を一定量保持する。・ミネラルバランスがよい。
・水質汚染を防ぐため、採水地の周辺の環境保全が常に行われている。
・泉から直接採水され、添加物を加えることなくボトリングする。
スプリング・ウォーター
特定水源より採水された地下水のうち、地下で滞留又は移動中 に地層中の無機塩類が溶解したもの 泉から直接採水され、添加物を加えることなくボトリング されたもの。
プロセスド・ウォーター
ミネラルウォーター 加工水。熱処理やろ過など人の手を加えたものは、加工水となる。
■硬度とは

硬度はミネラルウォーターの味を決めるといわれていますが、そもそも硬度とは何を表しているのでしょうか。
硬度とは、水の中に含まれるミネラル類のうちカルシウムとマグネシウムの合計含有量の指標です。
簡単に言うとカルシウムとマグネシウムの含有量が比較的多量である水を硬水、少ないものを軟水と呼びます。
硬度は「石鹸の泡立ちにくさ」を示すものとして(硬度が高いほど泡立ちにくい)生活に密着したものであり、また、硬水・軟水の分類は地域により異なります。

■硬度の計算方法

硬度を表す方法は国により異なり、日本やアメリカではカルシウムとマグネシウムの量を炭酸カルシウム量(CaCO3)に換算したものを硬度としており、mg/L又はppmで表記されます。これを計算式で表すと、一般に以下の簡便式を用いて計算することができます。

硬度[mg/l]=(カルシウム量[mg/l]×2.5)+(マグネシウム量[mg/l]×4.1)

 一方ドイツ硬度はカルシウムやマグネシウムの量を全て酸化カルシウムCaO量に換算して表します。 
水100ml中にCaO 1mgを含むとき1度とし、マグネシウムは、1.4MgO = 1.0CaOとしてCaOに換算します。

■硬度の分類

この硬度によって硬水や軟水に分類されます。硬水、軟水の分類も国ごと違いがあります。
ここでは、WHO(世界保健機構)の水質ガイドラインにおける硬水・軟水の分類をご紹介します。

▼硬度の分類WHO(世界保健機構)飲料水水質ガイドライン

軟水
0~60mg/L未満
中程度の硬水
60以上~120mg/L未満
硬水
120以上~180mg/L未満
非常な硬水
180mg/L以上

ミネラルウォーターの分類には各国により考え方に差があり、品名表示の方法もそれぞれ異なります。

ミネラルウォーターの分類とは別に、原材料としての水にも以下の区分があります。
ミネラルウォーターの見分け方で示しました、「ミネラルウォーターのラベル表示例」にある「原材料」は、農林水産省の「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」に基づいて以下の通り分類されます。

浅井戸
浅井戸からポンプ等により取水した地下水。
深井戸水
深井戸からポンプ等により取水した地下水。
湧水
不圧(自由面)地下水、被圧地下水の区別によることなく、自噴している地下水。
鉱水
ポンプ等により取水した地下水のうち溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水。
鉱泉
自噴する地下水のうち水温が25℃未満の地下水であり、かつ、溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水。
温泉水
自噴する地下水のうち水温が25℃以上の地下水、又は、温泉法第2条に規定される溶存鉱物質等により特徴付けられる地下水のうち飲用に適している水。
伏流水
上下を不透水層に挟まれた透水層が河川と交わるとき透水層内に生じる流水。
用途
硬度
解説
緑茶・紅茶
50前後
風味や香りを引き立てるには、軟水が最適です。苦みや渋みの基であるタンニンとよばれる成分がよく溶けるので素材そのものの味を楽しめます。
コーヒー
50前後
コーヒーの風味や香りを楽しみたいなら軟水が最適です。ただしエスプレッソなど苦みを抑えたい場合は、タンニンを沈殿させ苦み、渋みを抑える硬水を使った方がまろやかになります。
水割り
100以下
水割りは軟水、硬水それぞれ特徴があります。お酒の風味・香りをそのまま楽しみたいときは素材そのものの味を引き出す軟水が最適です。硬水は逆に素材の風味や香りを変えてしまいますが、使いようで、さらに味を引き立てることもできます。
食前酒
300以上
硬水には食欲増進の効果がありますので食前酒にむいています。
ごはん
10~50
ミネラル成分のカルシウムは食物繊維と結びついて硬化させる働きがあります。ご飯に硬水を用いるとパサつきがひどくなります。硬度の低い軟水が最適です。お米は最初に使う水をもっともよく吸収するので、最初にお米をとぐ水と、釜に入れる水にミネラルウォーターを使うとおいしく炊けます。
パスタ
300以上
パスタのでん粉とカルシウムが結びつくとコシの強いパスタができます。
肉料理
100以上
肉の硬たんぱく質とカルシウムが結びつき遊離するので、硬水を使えば肉がやわらかくなります。また、肉の臭みもアクとしてでてくるので、アク取りをすることでさっぱりしたスープに仕上げることができます。
和風料理
30~50
昆布やかつおの風味を一番引き出すのは軟水です。硬水を使うとうまみのもとであるアミノ酸、核酸系の物質が、カルシウムと結びつきアクとして出て行ってしまうので味が落ちます。
薬の飲み水
50以下
薬の成分に影響の少ない軟水が最適です。
赤ちゃんのミルク
50以下
赤ちゃんのミルクには栄養成分が変化する心配のない軟水がむいています。また、抵抗力の弱い赤ちゃんには刺激の少ない軟水が安心です。
ダイエット
600以上
ミネラルの多い硬水だと、利尿作用、腸の蠕動運動が促されるので便秘やダイエットに効果的です。サルフェート混入の水ならさらに新陳代謝も促進されるのでなおのこと効果的です。ただし、刺激も強いので軟水になれた日本人がいきなり硬度の高い水を飲むとおなかを壊してしまう心配もあります。徐々に慣らしながら硬度の高いものを利用するといいです。サルフェートならフランスのコントレックスが有名です。

・軟 水<: 和風の出汁、炊飯、湯豆腐、緑茶
・中硬水: しゃぶしゃぶ、鍋物、洋風のスープ
・硬 水: 飲料(スポーツ後、カルシウム補給)

コーヒーはインスタントでは差はありませんがローストやドリップ、エスプレッソなどにこだわる人にはドリップなら軟水、エスプレッソなら中硬水をお勧めします。